ハクナ マタタ

心配ないさー\(^o^)/

銀と月

ー時刻ー夕方

 

「ではそろそろ帰る。依頼の件、頼んだぞ。」

 

「はいよ。ったく相変わらず人使いの荒いこと。」

 

「文句を言うな。依頼を受けるのが主の仕事じゃろう」

 

煙管を加えた女は玄関へと足を進める。

後ろからは銀髪の男がのそのそと後を追う。

彼女と同じように靴を履こうとするが、

 

「いや、ここで構わん。一人で帰れる。」

「・・・・そうか。」

 

彼女が玄関を開ける。

外はあいにくの雨模様。

一日雨だったせいか、下を見渡せば所々には水たまりが出来ていた。

 

「こう何日も雨が続くと気分が萎えていけねエや。」

 

「・・・・・・・」

 

女は答えず、ただ外の景色を眺めていた。

「・・・・どした。」

 

男の呼びかけになお応じず、彼女は玄関先で佇んでいた。

どうやら景色を眺めているわけではないらしい。

 

やがて彼女は自分の二の腕をさすり出した。

 

 

 

「寒い」

 

「・・・え。」

 

彼女は振り返る。

「寒い。すまないが何か羽織れるものはないか。」

 

「え、羽織れるもんって言われてもアイツのじゃサイズ合わねえし・・・」

 

「そ、それはそうじゃな。」

 

彼女は思案し、やがて口を開いた。

 

 

 

 

「で、では仕方ありんせん。主ので我慢する。」

 

 

 

「え。」

 

男は困惑する。

 

ーーー確かに日中よりは少しばかり冷えた気もするが、

そんなに寒いか。というより、俺のをよこせって。。。ーーー

 

疑いの眼差しを彼女に向ける。

 

「な、なんじゃ。別に女物が良いとは言っとらんじゃろ。

主ので我慢してやると言うとるんじゃ。」

 

「お、おう」

 

ーーー・・・まぁ、あれか。俺のでも良いってほど寒いのかね。

何だか顔も少しばかり赤いし。

ん?ひょっとしてコイツ・・・ーーーーーー

 

 

「お前、風邪か?」

「いや、別にそこまで寒いわけでは・・・」

「違うのか。でも顔が少しばかり赤いぞ。」

 

男はおもむろに玄関へと降り、彼女の顔を確認しようとするが。

 

「だ、だだ大丈夫じゃ!ちょっとばかし肌寒いというだけで、その・・・」

 

今度は下を向いてしまった。

 

ーーーーー・・・まぁいいか、服なんていくらでもあるし。

それにそろそろドラマの再放送が始まるからな。ーーーーーー

 

 

それ以上の詮索は不要だと判断した男は

自室に向かう為、玄関からあがった所で動きが止まった。

 

 

男の裾を、彼女が掴んでいた。

 

 

 

 

「おいちょっと待て。どこへ行く。」

「どこって服取りに行くんだよ。」

 

「・・・・違う。」

彼女は男の裾をちょこんとつまみ、呟く。

 

 

「わっちが欲しいのはこれじゃ。」

 

 

 

 

 

 

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地下街。

そこはかつて、日の光を嫌った王が支配していた。

しかしある時一人の男を先導に地下街にて革命が起こされた。

やがて王は去り、今では閉じられた天井が開き

昼には太陽、夜になれば月を仰ぎ見ることの出来る”元地下街”となった。

 

王がいなくなり縛られた鎖はひきちぎられたのだ。

 

 

 

「きゃーー!やりましたね頭!良かった!!」

 

自由とされた街の治安を守る自警団。

王が去ったことで抑えられていた統制は崩れ、

小さな悪が街を狙うようになった。

普段は街の住人を守るために戦う彼女たちも

今日ばかりは黄色い声が飛び交っていた。

 

 

 

「か弱い女の子アピール作戦!大成功でしたね!!」

「ん、ま、まぁ・・・しかし、ヤツ何だか呆れたように見えたが。」

 

「良いんですよ!!ゲット出来ればこっちのもんなんですから!!」

「そ、そうか。」

 

煙管を加えた彼女の周りには、自警団である

女たちが取り囲んでいた。

 

「うわー、これがあの救世主の一張羅ですか。

ちょっと頭立ち上がってみてください!私たち、もっとしっかり見たいんです!!」

 

「う、うむ//」

 

座っていた彼女は腰をあげ、部下である自警団の前で立ち上がる。

 

「うわあああ!頭!可愛いです!サイズが合っていないその

ぶかぶか感がたまりません!!!!!」

 

「これはもう付き合っている彼の部屋に急遽泊まることになり、

しかし着替えを用意していなかった彼女が彼のYシャツを着た時のように

可愛いいい!!!」

 

「う、うん(*'ω'*)(そ、それは少しばかりずれているように思うが・・・)」

 

ーーーとりあえず、似合っていると受け取って良いようじゃな。ーーー

 

 

・・・・・・

ーーーしかしなんじゃ、これはなんというか。

まるでヤツに包み込まれて・・・・

 

いや、それは大袈裟かもしれんが、でも。

・・・・あ、ーーーーー

 

 

彼女は思いだしたかのように羽織った一張羅を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

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 「は?これが欲しいってお前・・・」

 

「・・・これが良い。」

 

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

 

「わーったよ。じゃあ今取ってくるから」

 

「・・・・・・・・・・・・」

「あの~裾を離してもらわないと取りに行けないんですが。」

 

彼女は顔を上げるが、言葉は出てこない。

目線を男から掴んでいる服へと移し、裾をちょんちょんと引っ張る。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

「え、これ?」

「そうじゃ。わっちはこれが欲しいんじゃ。」

 

「・・・・・・」

「・・・嫌なのか?」

 

「いや、別に嫌ってわけじゃ・・・」

「・・・・臭いのか?」

 

「臭くないですううううう!!!

ちゃんと毎日洗ってますから!!!!」

「ではさっさと脱ぎなんし。わっちも時間がないんじゃ。」

 

「・・・へいへい。」

 

男は自分の着ていた一張羅を脱ぎ、彼女に手渡す。

 

しかし、彼女はすぐに羽織ろうとはせず、その一張羅をまじまじと見つめる。

両手を使って広げ、前、後ろと一張羅をひらひらさせていた。

 

「・・・・何してんの。」

「い、いや。その~あれじゃ。

カレーの染みが着いていないか探してただけじゃ。

それじゃあな。依頼、頼むぞ。」

 

そう言いながら、彼女は借りた一張羅を羽織り

駆け足で去っていった。

 

 

「・・・・変なやつ。」

 

男は一人、呟いた。

 

 

しかし、雨を眺める男の顔は

不思議と普段より優しかった。

 

 

 

 

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彼女は、羽織った一張羅に顔を埋める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・銀時・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

fin